今年はロンドン・オリンピック。普段はスポーツをテレビで鑑賞しない人も、オリンピックは別とスポーツ鑑賞される人も多いかもしれません。
日本では、ナイーブにも黒人の身体能力が優れいているから、これだけの素晴しいプレーが出来るという言説がマスコミに溢れていると思いませんか?
また、日本人はそうした言説、ステレオタイプを無批判に受容してしまう人が多いようです。
私は文化人類学の時間に、ある人種はある種の能力が優れているという言説・思い込みは創られたものであると講義しています。
人種そのものが創られた概念なのですが、ある人種が優れている能力を持つと言われても、多くの場合は、創られたものであり、
また、そういう言説が広まるにつれ、人々はその「神話」に合わせようとする傾向があるのです。
この本は、その講義の副読本に学生に薦めようと思っています。
この本によりますと、「オリンピックの陸上男子100m決勝で、スタートラインに立った選手56人は、ここ30年すべて黒人」だそうです。
しかし、かつて 、彼らはスポーツには「劣った人種」であるとされ、記録からは遠いところにいました。
でも、今は、黒人の身体能力はスポーツに秀でているという言説が蔓延していますが、それは何故なのでしょうか?
アメリカにおいて黒人の職業選択の余地が狭く、他の職業では成功しにくかったことにも起因しています。
また、陸上競技における世界レベルのアスリートはケニア人が多いのだそうですが、その中でも、長距離走は内陸部のナンディの人たちが多いということです。
そうしたアスリーーとには、小学校へ10キロメートル以上の距離を走行で通った人が多いということです。
別の理由も述べられていますが、それは本を読んでのお楽しみ。
あるスポーツが秀でるようになるには、政治的・経済的・社会的・文化的要因も大きく占めています。
2002 FIFAワールドカップ(日韓ワールドカップ)の際、日本のメディアは無邪気にも「人種」や「民族」の身体能力について語っていました。
その後のマスコミ学会では、そのスポーツ中継の言葉をすべて洗い出し、コンピュータで分析をしたものを発表している研究者がいました。
あの時のスポーツ報道を見て、私はおかしいと思っていましたが、きちんと、それを分析していた研究者がいらしたのですね。
この 「人種とスポーツ~黒人は本当に「速く」「強い」のか」 (川島浩平著 中央公論新社 2012年)を、
今回のロンドン・オリンピック報道に携わる人すべてに読んで欲しいなと思いますし、
皆さんにも、読んで欲しい本です。
一歩先のスポーツ報道を目指すためにも、スポーツ中継を楽しむためにも。
尚、6月13日(水)午後9時から麹町ワールドスタジオ「原麻里子のグローバルビレッジ」では、近代スポーツ発祥の地イギリスとイギリス連邦のスポーツをお伝えします。
ゲストは株式会社ケン・マネジメント代表取締役佐藤けんいちさんと、フリーアナウンサー・研修講師の岡本るみ子さんです。